第38回『パピーウォーカー』

みなさん、こんにちは。
株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。
今回は「パピーウォーカー」について勉強していただきます。

盲導犬には3人の親がいるといいます。
生ませの親である「ブリーダー」、育ての親である「パピーウォーカー」、しつけの親である「訓練士」です。
この中の「パピーウォーカー」とは、盲導犬候補用の子犬(パピー)を生後50日程度から1歳になるまでの間、飼育家庭で人間社会のルールを学びながら一緒に生活し、盲導犬にとってもっとも大切な「人間に対する親しみや信頼感」を学ばせるという里親ボランティアです。
盲導犬は、はじめから盲導犬として誕生するわけではありません。
当然、盲導犬にも子犬の時期があります。
将来、子犬が盲導犬として活躍できるかどうかは、生後12ヶ月までの育て方に大きく左右されます。
なぜなら、盲導犬はユーザーである視覚障害者とあらゆる場所へ行き、いかなる時でも冷静沈着に行動できなくてはならないからです。
そのためには、将来遭遇するであろう環境について学んでおく必要があります。
それで、訓練の前にパピーウォーカーに預けられるのです。

盲導犬は人間の目となる訳ですから、人間との絶対的な信頼関係がないと務まりません。
美味しそうな食べ物の匂いがしても足を踏まれても我慢して、人間にはむかう事なく自分の本能を押し殺して人間に尽くさなければなりません。
それは、子犬の頃にパピーウォーカーである人間から愛情をたくさん受け、人間に対する基本的信頼感が確立されているからできることなのです。
盲導犬の訓練所では歩行訓練しか行いません。
したがって、盲導犬としての態度や振る舞いはパピーウォーカー時代に勉強します。
散歩などの外出によって、町の様子、交通事情といった様々な環境を経験します。
そして、パピーウォーカー時代に人間と過ごした楽しい経験が、子犬を仕事が出来る犬へと成長させるのです。
パピーウォーカーに愛情いっぱいで育てられた子犬は、満1歳から約半年間、盲導犬としての訓練を受けたのちに、視覚障害者の方々に引き渡されます。

盲導犬だけでなく、人間も1歳前後までどのように育てられたかによって性格形成に大きな影響を受けます。
子犬と一緒で、親の愛情をいっぱい受けて育てば、社会に出てからも他の人に愛情を与えることができる人間になりますし、そうでなければ人を愛することや信頼することができない性格の人間になります。
母親の温かなお腹の中で何の不自由もなく生きてきた赤ちゃんにとって、外の世界は楽な世界ではありません。
自分の周りに他の人間がいても「きっと自分を助けてはくれないだろう」という不信感が生まれそうになります。
その不信感というハードルを乗り越えて、人間への信頼感を持たなくてはなりません。
赤ちゃんは1歳前後までは何をしてもゆるされます。
おしっこやウンチをもらしても怒られないし、どんなに泣いても泣き虫だなんて非難されません。
何もできなくても、バカにされるどころか、周りの人の深い愛情で包み込まれます。
この周りの人たちの愛の中で、人生への希望と人への基本的信頼感とが育つのです。

この時期の基本的な信頼感が、将来の人間関係の土台になります。
私たちは、基本的に人を信頼できるからこそ、友人や同僚や家族とうまくやっていくことができるのです。
基本的信頼感を育てるためには、周りの人の愛情が必要です。
この時期に人への基本的信頼感が得られないと、知的発達の遅れや情緒表現の未熟に陥ることになります。
また、この時期に「幼児虐待」などを受けると、劣等感を持ったり、いつもビクビクしたり、物事を悪いほうに取るようになります。
乳児期のお子さんやお孫さんをお持ちの方は、ぜひスキンシップによる深い愛情を与えてあげてください。
パピーウォーカーが盲導犬に愛を与えるように・・・。

関連記事はこちら