第41回『猪狩家の食卓』

みなさん、こんにちは。
株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。
今回は猪狩耐男(いかりたえお)さんと猪狩溜子(いかりためこ)さん夫婦のお話です。

猪狩夫婦はまだ新婚で、耐男さんは銀行勤務、溜子さんは訪問介護(ホームヘルパー)の仕事をしています。
耐男さんはまじめな性格で普段から口数が少ないのですが、溜子さんは積極的な行動派でバリバリ仕事をこなすタイプです。
当然、猪狩家の夕食の食卓では溜子さんが一方的にしゃべって、耐男さんがそれを聴くということになります。
それでも、お互いの性格を知っている二人には楽しい食卓でした。

ところが、独身で仕事をしていた時とは違って、家事をこなしながら仕事をしている溜子さんにはだんだん仕事のストレスがたまってくるようになりました。
こうなると、溜子さんは食卓で仕事のグチを漏らしても何も答えてくれない耐男さんを不満に思うようになり、溜子さんの話はますますエスカレートするようになりました。
食事が終わって、居間でくつろいでいる耐男さんの横でも一方的に仕事の怒りをぶつける溜子さん。
さすがの耐男さんも「いい加減にしろ!」と言うようになり、夫婦の関係は冷え込んでいきました。

「こんなことではいけない」と思った溜子さんはカウンセラーのところに相談に行きました。
溜子さんは「夫にストレスを与える自分の性格を何とか矯正することはできないか」と相談に行ったのですが、そのカウンセラーは「そんな必要はありませんよ」とニコッと笑って、溜子さんにある一つの提案をしました。

カウンセラー:「あなたは甘いものは好きですか?」、溜子さん:「好きです」、カウンセラー:「何が一番好きですか?」、溜子さん:「駅前のケーキ屋で売っているイチゴのミルフィーユです」、カウンセラー:「では少し負担になりますが、そのケーキを毎日買ってください。
そして、夕食のデザートとして食べたら『ゴメンなさい』と夫に言ってください。
それ以降は絶対に夫にグチを漏らしてはダメです。
そしてケーキを食べたらグチを漏らさないことを前もって夫に約束しておいて下さい」、溜子さん:「そんなことで本当に夫婦関係は改善するのですか?」、カウンセラー:「大丈夫です!」

その夜、溜子さんはカウンセラーに言われたとおり耐男さんと約束をしてから、いつものようにグチをしゃべりはじめました。
そして、デザートにイチゴのミルフィーユを食べてから「ゴメンなさい」と言って食事の後片付けをし始めました。
それから耐男さんが居間に場所を移しても、一切グチを漏らさなかったのです。すると、次の日・・・さっそく効果が現れたのです。

翌日、耐男さんがいつものように帰宅して溜子さんが出迎えると、耐男さんのその手には・・・駅前のケーキ屋の袋が・・・。
そして、その中にはイチゴのミルフィーユが入っていたのです。
それをきっかけに二人の関係は急速に改善し、今では溜子さんが「今日、銀行の仕事はどうだったの?」と耐男さんの話を聴く場面もしばしば見られるようになり、猪狩家の食卓は様変わりしたのでした。
めでたし、めでたし。

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