第70回「ストレスコーピング」

みなさん、こんにちは。株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。今回は私がある企業の研修打ち合わせ時に感じたことを書かせていただきます。

ある大手企業の社員教育担当の方と新入社員のメンター(新入社員を指導する先輩社員)対象の研修の打ち合わせをしていたときです。メンターに対して、ミスをした新入社員への関わり方や落ち込んでいる新入社員への心のケアについて勉強していただくという研修内容をお話ししていると、担当の方が「新入社員に対して落ち込まないように関わるコミュニケーションも大切ですが、まずはルールや時間を守ることをしっかり教えて、守らない場合は『叱る』ということをメンターたちに教えて欲しい」と言われたのです。目からウロコが落ちました。

私たちストレスマネジメントやメンタルヘルスに関わるカウンセラーや研修講師はストレスがたまっている人や精神的に落ち込んだ人に対して、周りの人がどう関わるか、本人がストレスをどう対処するか、また本人が落ち込まないために物事のとらえ方(認知)を変えていく手法などを中心に指導しがちですが、それ以前に「ストレスをためるような、そして精神的に落ち込むような出来事をいかに少なくしていくか」に注目しなければいけないことに気がつきました。

ストレスに対する対処行動のことを「ストレスコーピング」といいます。ストレスコーピングには二種類あって、「情動焦点型コーピング」と「問題焦点型コーピング」です。情動焦点型コーピングは、ストレス状況に置かれたときに起こる感情的な反応をいかにコントロールしていくかに焦点をあてて対処していく手法であるのに対し、問題焦点型コーピングはストレスの原因そのものを明確化し、分析し、その原因に直接働きかけていく対処法です。担当の方が言われていたのは、ストレス状況に置かれたときの対処よりもそのストレスの原因を予防する対処法、つまり情動焦点型ではなく問題焦点型のコーピングをメンターに指導して欲しいということだったのです。

私は「カウンセラーの資格を持った専門家」という名前に甘え、どちらかというと現場よりも「ストレスが起こってからの対処」という医療職側の立場で仕事をしていたことに深く反省しました。また、新入社員など若い人に対して、ストレス耐性(ストレスに対する抵抗力)が弱いので「落ち込みやすい性格だ」と決め付けて、その対処法を指導しようとしている自分にも気づきました。

もともと「落ち込みやすい性格」などというものはありません。彼らは自身の経験不足から「落ち込みやすいミスや失敗」を多くしがちである存在なのです。そんなミスや失敗が続けば、新入社員だけでなく誰でも落ち込むものなのです。だったら、その落ち込みやすいミスや失敗はなぜ起こるのかに焦点をあてて、その原因である「ルールや時間を守らない」ということに対してキチンと叱るという対処法が一番なのです。

まだまだ勉強不足であるこんな私ですが、引き続きみなさんのご指導をいただきながら仕事をしていきたいと思います。感謝です。

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