第105回「社会的自己意識」(2016.5.10掲載)

みなさん、こんにちは。株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。

今回は「沈没船ジョーク」と呼ばれている世界中で有名なお話を紹介します。「沈没船ジョーク」は世界各国の国民性の違いを面白おかしく表現していて、世界のどこでも通じるジョークのようです。

いろいろな国の人が乗った巨大豪華客船が氷山に接触して沈没しかけています。船から脱出しなければいけませんが、救命ボートの数よりも乗客の数が圧倒的に多い状況です。女性と子供と老人を優先させると、残りの男性には厳寒の海に飛び込んでもらうしかありません。そこで、船長は男性たちにスムーズに海に飛び込んでもらうために、次のように言ったそうです。
イギリス人には…「紳士はこういうときに飛び込むものです。」
アメリカ人には…「海に飛び込んだらヒーローになれます。」
日本人には  …「みなさん、もう飛び込みましたよ。」

このジョークでわかるように、日本人は他の国の人から見ると、「自分がどうしたいか」よりも「他の人はどうするか」「周りの人からどう見られているか」ということを基準に行動を決める傾向があると思われているようです。このように、他の人の評価を気にしたり、他の人の基準に沿った行動をしようとする傾向を「社会的自己意識(公的自己意識)」といいます。

自分自身を理解して自分の感情や行動を調整したり、他人との調和的な関係を生み出すために感情を効果的に活用する能力で、「心の知能指数」と呼ばれている「EQ」という理論があります。EQの考え方では、感情を上手に管理して利用できる能力を生みだす技能として「24の素養」を挙げています。自分の24の素養を検査で数値化して、自己理解をしたうえで自分の感情能力を高めていくヒントにして、仕事などの自己開発に役立てていくのがEQの考え方です。そして、その24の素養のうちの1つが「社会的自己意識」です。

「社会的自己意識」は自分が周囲にどのような人間として映っているかを知ろうとする傾向です。この「社会的自己意識」の数値が高いと、自分に対する評価や噂にとても敏感になり、周囲の期待に沿った行動をとろうとする傾向があるとされます。この数値が高い人は言葉遣いや態度は丁寧になり、集団や組織のルールにはうまく適応して行動できるようになります。しかし、その傾向が強くなり過ぎると、他人に合わせすぎてしまったり、周囲の目や世間体を気にしすぎてしまって、自分の価値を見失って身動きが取れなくなってしまいます。どうやら、日本人はこの「社会的自己意識」が強い傾向にあるようです。

自分が周囲からどう思われているかということに興味や関心があることは決して悪いことではありません。しかし、その傾向が強すぎると人からの評価ばかりを気にしすぎてしまって、仕事でいえば「働き過ぎ」や「気の遣いすぎ」により、ストレスをためてしまいがちになります。それが「日本人の良さ」でもあるのでしょうが、日本人のメンタルヘルスの悪化の原因にもなっているのです。自分の考えをしっかりと持ち、他人に振り回されないように心掛け、「人は人、自分は自分」と自らに言い聞かせて、自分自身が本当は何をしたいのかを見つめるようにしましょう。

自分の感情能力やその能力の開発に興味のある方は、一度「EQ」について勉強してはみてはいかがでしょうか。

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