第43回 私たちの暮らしと政治 雇用の将来について

 

 

10月5日(水)に開催した明日知恵塾は、特別企画として国会見学ツアーを実施。普段は足を運ぶことのない国会議事堂の参議院議場や中央広間などを巡りました。また、国会の見学後には、参議院議員の石橋みちひろ氏と吉川さおり氏からのレクチャーの場が設けられました。趣向に富んだプログラムに参加人数は過去最高。参加者は、学生63名、社会人15名、総勢78名に及びました。

国会見学ツアーは、2班に分かれてスタート。正面向かって右側の参議院のエリアを約1時間掛けて巡っていきます。国会議事堂が完成したのは1936(昭和11年)。地上3階、地下1階の構造で、中央棟の高さは65.45mに及びます。国会議事堂を移動するためには、階段の上り下りを繰り返すので、思いのほか体力を用いるツアーに。国会議事堂の各階の構造は似ているため、迷子になる人もいるのだとか。

最初に見学したのは、本会議が開かれる参議院議場。演壇を中心にして議席が半円形に配列された議場です。参議院議員の定数は242人ですが、議席の数は、貴族院議場として使用されていた名残で460席。衆議院議場との違いは、正面中央に天皇陛下が臨席するスペースが設けられていることです。見学ツアーでは、国会の様子は見られなかったものの、荘厳な議場の雰囲気に包まれ、歴史の重みを体感。本会議の開会中は10歳以上であれば誰でも傍聴できるそうです。

参議院議場の次は、国会議事堂の中央棟へと移動。廊下に敷き詰められた弾力のある赤じゅうたんを踏みしめ、参加者のテンションは上がっていきます。2階から中央広場を見下ろすと、議会政治の基礎を築いた「板垣退助」「大隈重信」「伊藤博文」の3名の銅像が君臨。広場には、銅像が置かれていない4人目の台座があり、「政治に完成はない、未完の象徴」との意味が込められているとのこと。政治の道は奥深いということなのでしょうか。

約1時間にわたる国会見学ツアーが終了すると、参加者は参議院議員会館へと移動。明日知恵塾では恒例となっているグループディスカッションへと移行します。今回のディスカッションのテーマは、「私たちの暮らしと政治 雇用の将来について」。進行役は法政大学大学院の藤村博之教授が務めます。

学生と社会人は7グループに分かれ、ディスカッションがスタート。藤村教授は18歳に選挙権が引き下げられたことを受け、「若者の投票率を高めるために罰則を設けるのは賛成か、反対か」に論点を絞り、選挙の意義を考えていきます。参加者は国会見学ツアーで体感した政治への臨場感をそのままに、討論を白熱させていきます。

それでは、各グループで上がった代表的な意見を見てみましょう。

  • 政治に関心のない若者は、選挙にペナルティを課すと政治家のパフォーマンスにだけ目を向けることになりかねない
  • 選挙に行ったことで特典をもらえる制度にすると、投票率が上がるのでは
  • ペナルティを課して、中身のない選挙になっては意味がない
  • 投票率を上げるためには、コンビニなど、身近な場所で投票できるようにするとよい
  • ペナルティを設けることで、投票率が高まり、より多くの国民の声が政治に反映できるようになる

また、今回の明日知恵塾は、国会議員の話が直接聞けるのもうれしいポイント。普段は会う機会のない吉川さおり議員と石橋みちひろ議員から、「働くことと国会のかかわり」をテーマにレクチャーを受けます。それでは、吉川議員、石橋議員が学生に対してどのような話をしたのか、ダイジェストで紹介します。

「学生の皆さんの多くは、今後、就職活動を行っていくのだと思います。私が就職した1998年は、就職氷河期と呼ばれる時代でした。経済状況の悪化という外的要因により、就職がかなわず、その後の人生にも影響を与えた若者を多く見てきました。そのとき、政治はなにをしてくれたのか。政治は若者を救ってはくれませんでした。“若い人たちの声をもっと政治に届けたい”と痛感したことが、政治家をめざしたきっかけです。若者の皆さんの声を政治に反映させることで、暮らしやすい社会にしていきたい、と思いながら、日々議員活動を行っています」(吉川議員)

「皆さんが今後、就職して社会人になったとき、働き方の大部分は法律によって定められています。命を守るのも、健康を守るのも、法律が土台になっているのです。その法律は、働く人の立場のものでなければ意味がありません。勝手な論理で法律を成立させないためには、一人ひとりが選挙に足を運び、政治に参画することが重要です。今国会においては、年金や労働時間に関わる法律が審議されています。これらの法律に最も影響を受けるのは若者です。自分たちの将来が、政治により左右されることを意識してもらえればと思います」(石橋議員)

最後に藤村教授が、「一定数の投票率にならない場合は、選挙を無効にすることで、国会議員と国民の政治に対する意識が変わるのではないか」というアイデアを示し、国会見学ツアーが終了しました。

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