第34回『ヤマアラシ・ジレンマ』

みなさん、こんにちは。
株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。
今回はみなさんがストレスケアに活かせる「ヤマアラシ・ジレンマ」というお話を紹介させていただきます。

アメリカの精神分析医ベラックは哲学者ショーペンハウアーの寓話を引用し、現代人が陥っている傾向として、これを「ヤマアラシ・ジレンマ」と名付けました。
ショーペンハウアーの寓話とは次のようなものです。

「ある冬の日、2匹のヤマアラシは嵐にあいました。2匹は寒いので、お互いの体を寄せ合って暖をとろうとしたところ、それぞれのトゲで相手の体を刺してしまいます。痛いので離れると、今度は寒さに耐えられなくなりました。2匹はまた近づき、痛いのでまた離れることを繰り返していくうちに、ついに、お互いに傷つけずにすみ、しかもほどほどに暖めあうことのできる距離を発見し、あとはその距離を保ち続けました。」

「ヤマアラシ・ジレンマ」とは、人と人との間の心理的距離が近くなればなるほど、お互いを傷つけ合うという人間関係のジレンマのことをいいます。
人間同士がお互いに親しくなるためには「近づく」ことが絶対に必要でしょう。
しかし、お互いに近寄りすぎると極度の緊張感にさいなまれ、それが進むと反発が起きます。
かといって遠ざかり過ぎると精神的に疎外感が生まれたり、違和感を抱いたりしがちです。
いい関係を保つには、適正な距離をそれぞれがもつことです。

「こころの仮面をはずして人に近づきたい。でもどうしてもはずせない」・・・。
そんなあなたは、「ヤマアラシ・ジレンマ」に陥っているのかもしれません。
確かに、それほど親しくない相手から嫌われるよりも、親しなった人から嫌われる方がつらいです。
それに、親しくなればなるほど、ある程度は自分の願望をおさえなければならない場合もあります。
せっかく時間をかけてふたりの関係を築いたのに、その関係がだめになってしまったら・・・。
このように、あれこれ考えてしまうのも無理のない話なのかもしれません。

どうしたらうまく心の距離をとれるのか、うまくコミュニケーションをとるにはどうしたらいいのか。
それには、まずは今までより少し相手との距離を縮めてみてはどうでしょう。
☆人と話をするときのふたりの間の距離をいつもよりちょっと縮めてみる。
☆人と並んで歩くとき、いつもよりそばに寄りそってみる。
☆人と一緒に食事をするときには、小さめのテーブルの店を選び、できるだけ近くに座ってみる。

親しい相手が近くにいると、「自分に親しみを持っているんだな」と感じて、うれしく思うものです。
こころと体はつながっています。体の距離が近づけば、こころもグッと近くなります。
それが、「ヤマアラシ・ジレンマ」に対する最も有効な解決方法であり、人とのグッド・コミュニケーションの近道なのです。

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