第84回「オフィス・バイオレンス」

みなさん、こんにちは。株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。

最近、家庭内や恋人間で起こる暴力行為である「ドメスティック・バイオレンス」に対して、職場で起こる「オフィス・バイオレンス」という言葉をよく聞くようになりました。いわゆる職場のハラスメントのことです。ここ1年の間に私のところにハラスメント防止研修の依頼が急増していますが、ハラスメントの厄介なところは加害者側が「自分はハラスメント行為をやっている」という意識がないことです。ハラスメントを防止するためには職場で働くすべての人が「人間の価値観はそれぞれ違う」ということを理解することが大切です。では、みなさんは次の話が理解できますか。

ハラスメント防止研修で男性管理職の人に「あなたはオフィスで自分の上司に『ホッチキス持っているか』と聞かれたらどうしますか?」と聞くと、多くの人が「上司のところにホッチキスを持っていきます」と答えます。でも、今の若手社員に「ホッチキス持っているか」と聞くと「持っています」と答えるだけです。

日本語という言語はすべてを語らずに話す人の気持ちを類推する言語だとよくいわれます。だから、自分が若手社員のときは「ホッチキスを持っていくのが当たり前だ」と教えられたのでしょう。でも、それは今の若手社員には通用しません。彼らはコンピュータ世代で、試験もマークシートで正解を選ぶことを教えられている人たちなのです。「行間を読め」や「言外の意をくみとれ」は通用しないのです。ホッチキスが欲しい場合は「ホッチキスを貸してくれ」と言わないといけないのです。実は、そのような価値観の違いがハラスメントを生み出すのです。あなたはそうやって、自分の価値観を強要したり、「最近の若い奴はなっとらん!」とレッテルを張っていませんか?

もう一つの話です。同じくハラスメント防止研修で男性管理職の人に「フロントホックブラって知っていますか?」と聞き、「フロントホックブラは○○に留め具があるから××が簡単なブラ」の○と×を答えてもらいます。すると、多くの人が「フロントホックブラは前に留め具があるからはずすのが簡単なブラ」と答えます。ところが、この質問を女性にすると多くの女性が「フロントホックブラは前に留め具があるからつけるのが簡単なブラ」と答えるのです。

人は自分の置かれた立場から物事を見ようとします。しかし、これからの時代は「いかに物事を多面的に見るか」が重要になってきます。最近は「ダイバーシティー」という言葉をよく耳にします。「ダイバーシティー」は一言でいうと「多様性」になりますが、人の価値観を尊重してお互いに認め合い、どんな人も働きやすい環境をつくっていくということです。職場の一人ひとりがこのような意識を持ち、オフィス・バイオレンスなどという言葉がこれ以上流行しないように祈ります。

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