第83回「It’s a small World!(世間は狭い)」

みなさん、こんにちは。株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。今回はコミュニケーションプロデューサーとして多くのコミュニケーション研修を行なってみえる夏川立也さんの講演会で聞いたお話を紹介します。

初めて出会った人との間に共通の友人がいると「世界は狭いですね」などといいます。では、本当に世間は狭いのか。これを真面目に議論して、社会科学的に証明しようという実験が行なわれました。アメリカの社会心理学者のミルグラムは実験で「アメリカ合衆国国民から無作為に選んだ2人の人間の間は、平均して6人の知り合いを介することでつながる」という仮説を確立しました。これは「スモールワールド現象」などとも呼ばれ、現在でもSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の効果や伝染病の感染などの研究にも役立っています。

このほかにもユニークな実験があります。みなさんはアメリカの映画俳優のケヴィン・ベーコンをご存知ですか。青春映画「フットルース」(1984年)で主役を演じていますが、それ以降はあまり主役を演じることも少ないので知らない方も多いかもしれませんが、彼は「どんな役も断らない」といわれ、スポーツものからSFものまで脇役でも悪役でも演じるキャラクターは多種多様、映画出演が多いということで共演した俳優も多いことから彼を使ってある実験が行われました。

ケヴィン・ベーコンと直接映画で共演した人をベーコン数1、ベーコン数1の人と共演した人(ケヴィン・ベーコンと映画で共演していないけど、共演したことがある人と映画で共演している人)をベーコン数2、同様にベーコン数2の人と共演した人をベーコン数3というように、ベーコン数4、5、6と調べていきます。つまり、知り合いの知り合いをたどっていくと何人でベーコンにたどりつくかというのがベーコン数なのです。この実験の結果、ほとんどのハリウッド俳優がベーコン数3までに収まってしまうことがわかりました。また、ハリウッドだけでなく世界中の俳優でもほとんどがベーコン数6でつながっているそうです。

日本でもある大阪のテレビ番組で同様の実験が行われています。テレビ局のアナウンサーが大阪の中心街で中学生らしき少女に声をかけます。アナウンサーはその少女に実験の内容を説明し、了承を得た上で少女の写真を一枚撮影して少女のプロフィールを聞いてメモします。そして、アナウンサーは写真とメモを持って空港へ向かい、飛行機に乗って北海道に向かいます。実験のスタート地点は北海道の最北端である稚内です。まずは稚内の海岸で昆布を採取していたおばあさんに「この少女をご存知ですか」と声をかけます。知っていれば、この実験はその場で終了ですが、知っているわけはありません。知らなければ少女のプロフィールを説明し、少女に最も近いと思われるその人の知り合いを紹介してもらいます。おばあさんは「知り合いはあまりおらんが、週に一回郵便を届けてくれる郵便配達員さんかな…」と答えました。アナウンサーは今度は紹介してもらった郵便配達員のところに行って同じことを繰り返します。さて、ここから何人目で大阪の少女にたどり着いたでしょう。結果は約10人でした。この実験からわかることはやはり「世間は狭い」ということです。

みなさんは自分の知っている人がいる場では絶対にやらないのに、知っている人が見ていないからといって悪いことをしたり、陰で人の悪口を言ったり、知らない人が困っているときに助けてあげなかったりしていませんか。「世間は狭い」のです。内緒で隠れて行なった行為はいつかバレて自分に跳ね返り、結果的に自分の評価が悪くなることになるでしょう。逆に、知らない人を助けたり、知らない人に親切にしたりすると、それがいつかは自分が知っている人に伝わり、より多くの人から評価され、感謝されることになるのです。「人類みな兄弟」、「友達の友達はみんな友達」という言葉を思い出して、今一度自分の行動を見直してみましょう。

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