第42回『予言の自己成就』

みなさん、こんにちは。
株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。
今回は「予言の自己成就」についてお話ししたいと思います。

みなさんは血液型性格診断を信じますか。
一説には血液型性格診断には科学的根拠がないという主張があります。
こんな会話を聞いたことありませんか。
「君、もしかしてA型?」
「あたり!すごいね、どうしてわかったの?」
「君は几帳面だからなぁ、やっぱりそうか」

このように、血液型性格判断が当たるとその印象は強く残り、言ったほうも言われたほうも「血液型性格判断は当たる」ということを信じることになります。
でも、このA型の人は前にも同じことを言われていて、自分がA型であるということをもともと強く意識していたために自然とA型らしい(几帳面な)行動をしていたのかもしれません。
また、これを言われたことを機会に、この人が血液型に当てはまる(几帳面な)性格を次第に強く持つように変わっていくかもしれません。
つまり、本来のその人の性格と血液型が一致した場合さらにその傾向が強まり、仮に一致しなくても当てはまる方向に自分の性格が変化するというのです。

このような現象を「予言の自己成就(または自己成就的予言)」と呼んでいます。
「予言の自己成就」というのはもともと心理学の概念で、予言(この場合でいうと「A型は几帳面な性格」)をした者もしくはそれを受け止めた者が予言を信じ、予言の後でそれに沿った行動を取ることにより、実際にその予言が現実のものとして成就してしまうという現象をさします。

少し前に漫画「ドラゴン桜」が話題になりましたが、この漫画でも「予言の自己成就」という表現が出てきます。
元暴走族の弁護士が経営破綻状態となった落ちこぼれ高校を立ち直らせるために東大の合格者数を上げるのが手っ取り早いと考え、落ちこぼれ生徒を東大に合格させるために特進クラスを開設するというストーリーです。
この漫画では、勉強嫌いだった生徒に周りの教師が「必ず冬に成績が急上昇する」といい続けたことにより、本当に冬になって成績が急上昇するのですが、基礎学力をつけるところから始めて勉強を継続していく間、「必ず成績は上がる」「おまえたちはかならず東大に合格できる」と予言された落ちこぼれの生徒はそれを信じることでがんばり続けることができるようになり、予言した教師もそれを実現するために無意識に生徒を熱心に指導する。
そのおかげでますます生徒の学力は上がっていく。
つまり、予言をする方とされる方が両方ともそれを強く信じることで相互作用を起こし、その結果最終的に予言が成就されたのです。

逆に言えば、効果的な勉強のカリキュラムを組んでいたとしても、本人や周りが「無理じゃないの」と疑いをもっていると、効果が上がりにくいということです。
これって、会社での部下の育て方や子どもの教育、スポーツの指導などでも重要なことですよね。
たとえば、人前で話すのが苦手だと思っている人は、人前に出ると緊張してしまうことが多く、それでうまくしゃべれなくなって人前で話すのがますます苦手になるということが起こります。
そんな人には「いやいや話すのは十分うまいよ」「すぐにうまくなるよ」と言ってあげてください。
「君はしゃべるのが苦手だね」「話すのはそんなに簡単にうまくならないよ」などと言わないでください。

一般的に言われていますが、受験生の前で「滑る」とか「落ちる」「転ぶ」などの言葉、結婚式で「別れる」「切れる」「離れる」などの離婚を連想する言葉を使ってはいけないのはマイナス方向の「予言の自己成就」が起こってしまうからなのです。
みなさんもこれからは人前で「ダメだ」と思わせる言葉を使うのはできるだけ避けましょう。

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