みなさん、こんにちは。株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。前回、「失敗という体験は学びの体験」というお話をさせていただきました。今回は「成功体験」についてお話ししたいと思います。特に、今年の春に新入社員を受け入れる企業の方や新しい学生を受け入れる先生に聞いていただきたいお話です。
近年、交通事故死は減ってきています。飲酒運転の取り締まり強化やシートベルトの義務化の効果が大きいと思われます。ただ、未だによくニュースなどで目にするのが若者のスピードの出しすぎによる死亡事故です。運転技術の未熟さなのでしょうが、これは言い換えると車の能力を自分の能力と勘違いしていて運転した結果の事故ともいえます。話は変わりますが、私が以前勤めていた会社で採用担当だったときに面接をした男子学生が「趣味はゴルフです」と言うので詳しく聞いてみると、実際にゴルフをやったことはないがゴルフゲームでは「シングル」の腕前だというのです。印象を良くするためにそう言ったのでしょうが、彼が実際にゴルフコースに出たら、たぶん散々な結果になると思います。
このように、最近の若者の傾向として「機械やパソコンを用いて成功した体験を自分の能力と勘違いしている」という事例が多いのではないかと思います。私はこのような「機械やパソコンを用いて成功した体験」のことを「バーチャル成功体験」と呼んでいます。学生のときにこのようなバーチャル成功体験を経験して就職した新入社員にも同じようなことがいえます。彼らはさまざまな資格を持っていたり、パソコンを使って表計算やプレゼンテーションソフトを完璧に使いこなしますが、実際に彼らが入社してやる仕事は今まで経験したことがない「体で覚えるリアルな仕事」なのです。それもそのはず、いくらパソコンを使いこなせても、人間の仕事は「パソコンがカバーできないことをやること」だからです。それで、新入社員が自信を失ってしまって会社を辞めてしまったり、こころの病に陥ったりすることがあるのです。
「勝利のヒント~渡る世間の裏話」(早坂茂三著、集英社)に元龍拡散会長の(故)藤井康男氏の話として「グッピー現象」という言葉が紹介されています。これは「熱帯魚のグッピーが一杯いるところに餌をやると、盛大に食うのと、あぶれるのと、ぱっと二つに分かれる。かわいそうだと思って、あぶれた奴を別に移して餌をやると、また分かれる。何回も分かれる。人事は苦労したって意味がない。どんな優秀な奴でも半分は屑になる。駄目な奴でも半分は使える。」という話なのですが、もともと能力がなく、餌にありつけない体験をしたグッピーでも、次のチャレンジで餌を食べることによって、強い心を持って成長していくことを表現しています。
この話は、たとえはじめのうちは仕事についていけない新入社員でも、成功体験や敗者復活の機会を与えることによって、優秀な社員に変わっていく可能性があることを示唆しています。主にバーチャル成功体験しか経験していない新入社員や新入生をこれから受け入れる立場の方は、「こいつはできない奴だ」とあきらめずに、ぜひ仕事や教育の中で「リアルな成功体験」を経験させて、若い人たちを「できる奴」に育てていっていただきたいと思います。