第108回「アンガーマネジメント(3)」(2016.6.21掲載)

みなさん、こんにちは。株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。今回もイライラや怒りをうまくコントロールしてストレスを軽減する「アンガーマネジメント」についてお話ししていきます。

いつもイライラしている人や怒りっぽい人というのは、言い換えると怒りをうまく管理できない人です。怒りをうまく管理できない人とは怒りに振り回されている人です。では、怒りに振り回されないためにはどうしたらいいのでしょう。ここでヒントとなるのがタイムマネジメント(時間の管理)です。アンガーマネジメントはタイムマネジメントと考え方は一緒です。つまり、時間をうまく管理できない人とは時間に振り回されている人なので、時間に振り回されないためには、まずは時間のことをきちんと理解することが重要なのです。アンガーマネジメントも同じ考え方です。怒りに振り回されないためには、まずは怒りのことをきちんと理解することが重要なのです。それでは、まずは「怒り」について勉強しましょう。

「怒り」という感情は人間以外の他の動物も持っている感情です。イヌもネコもサルも怒ります。実は、怒りは動物にとっては自分や自分の子どもの身を守るための本能的な感情で、身の危険性を感じたときに「威嚇」や「警戒」のために怒りという感情を表すのです。同様に、人間も自分や自分の子どもの身の危険性を感じたら怒りを表します。たとえば、自分の子どもが動物に襲われたとしたら、怒りを表して子どもの身を守ろうとするでしょう。ちなみに、人間は自分の子どもだけでなく、親でも身を守ろうと怒りを表すかもしれませんが、親の身を守ろうとするのは動物では人間だけのようです。人間以外の動物は「親の介護」などしませんよね。

このように、動物は本能的に身を守るために怒りという感情を表すのですが、人間だけは別の目的で怒りを表すことがあります。人間は「相手に何かを伝える」という目的で、コミュニケーションの手段として怒りを使うことがあるのです。

さて、ここまでで怒りについてある程度理解していただいたと思うので、ここでアンガーマネジメントの手法を一つ学んでいただきます。人間は怒りを表すことで「相手に何かを伝える」といいましたが、具体的には「怒りとは違う別の感情」を伝えようとしているのです。実は、怒りの感情は単独では発生しない感情で、「怒りの感情は第二次感情」といわれ、怒りという感情の前に必ず「第一次感情」が発生しているのです。人間は、この第一次感情を相手に伝えるために、怒りという第二次感情を相手に表しているんだということをまずは理解してください。

たとえば、夜遅くに家に帰ってきた自分の娘に対して、親が「こんなに遅くまで何やっていたの!」と怒りを表したとしたら、それは「あなたが帰ってこないから心配だった」という感情を伝えようとしているのです。それが第一次感情です。もし、帰ってきたのが夜10時であれば、怒りの程度は低いかもしれませんが、それが夜12時であれば怒りの程度はかなり高くなるでしょう。つまり、第一次感情が大きければ、それだけ怒りの程度も高くなるのです。ここで考えてください。もし、この場合に怒りを伝えずに「心配だった」という第一次感情を伝えたらどうなるでしょう。たぶん、この娘はイヤな気持ちにはならず、逆に「自分が悪かった」という謝罪の気持ちや喜びの気持ちが生まれてくるかもしれません。こうなれば、お互いに怒りを表さずに済むようになり、「怒りの連鎖」もここで断ち切ることができます。

同様に、車を運転していたら、急に隣の車線から自分の車の前に別の車が割り込んで来たらどうでしょう。クラクションを鳴らして怒りを表すかもしれません。でも、それは「急に割り込んできたのでヒヤッとした」という不安な感情を伝えようとしているのです。この場合は、相手に「ヒヤッとした」という第一次感情を伝えられないかもしれませんが、「怒りの感情は第二次感情」ということを理解していれば、友達に「こんなことがあってヒヤッとした」と伝えたり、自分の中で「ヒヤッとした」という感情を理解して納得したりすることで、第二次感情の怒りを表さなくても済むことになるのです。

アンガーマネジメントの第一歩は「怒りの感情の前には第一次感情という別の感情が存在し、怒りはそれ伝えるための手段として使われている」ことを理解し、第一次感情を表すことで「怒らなくていいことは怒らない」を実践することです。このように、怒ることと怒らないことを区別できる自分を作ることができれば、怒りの連鎖を断ち切ることができるのです。

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