2月9日、全電通労働会館(東京都千代田区)で第51回明日知恵塾を開催しました。今回は特別企画として、日本労働弁護団・弁護士の嶋﨑量氏をゲスト講師に迎え、「労働問題の弁護士と学ぶ 職場のトラブル対処法」をテーマに実施。学生10名、社会人14名が参加しました。
今回の明日知恵塾は、基調講演とグループディスカッションの2部構成のプログラムで実施。基調講演では、『「ブラック企業」って何だろう?』をテーマに嶋﨑弁護士がブラック企業の見分け方や対処法を解説しました。
それでは、ブラック企業とは、どのような会社で、なにが問題なのでしょうか?
ブラック企業とは、違法な労働を強い、労働者の心身を危険にさらす企業(=労働法を守らない企業)のことをさし、言い換えれば、若者を「使い捨て」にする企業のことです。ブラック企業が問題なのは、①個々の労働者が重大な被害を被ること、②長期的に見た社会全体の損失が大きいこと、などが挙げられます。
嶋﨑弁護士は、ブラック企業の見分ける手段として、①採用活動・求人広告から見分ける、②客観的データから見分ける、の2点を挙げ、特に以下の項目に注意を向けるべきと指摘しました。
- 採用活動・求人広告から見分ける
■短期間で管理職になることを求めてくる
■求人広告や説明会の情報がコロコロ変わる
■求人広告の怪しい表現→「感動」「成長」「夢」「若手でも活躍できる」などの言葉
■不自然な大量採用
■給料が明らかに高い・安い
■不相応な豪華な説明会 など
- 客観的データから見分ける
■数値を見よう
・新卒者の3年離職率(業種・男女の定着率にも注目)
・従業員数と採用実績比率(退職を見越した採用?)
・平均勤続年数
・平均残業時間、有給消化率
・「NA」(No Answer)の意味
■過労死・過労自殺を出している
■労働組合の有無 など
ポイントになるのは、客観性を重視すること。OB訪問などで先輩の話を聞く際も、「毎日の残業はどのくらい?」「新入社員はどのくらい定着している?」など、客観的な数値を聞き出すことで、ブラック企業の度合いが測りやすくなるとのことでした。
グループディスカッションは、職場で発生しやすいトラブルのケースをあげながら、学生と社会が対処法について話し合いました。
それではどのような事例をテーマに話し合われたのか、一例を見てみましょう。
【事例1】
レジの金額が合わないときは、不足分をその日のシフトに入っていた全員の給料から天引きされていました。これに対して、どのように対応しますか?
【事例2】
テスト期間は「×」(バツ)を記入してシフト希望を出したのに、テスト期間もシフトを入れられた。これに対して、どうのように対応しますか?
【事例3】
会社から長時間の残業を強いられており、健康への悪影響を心配しています。
先日、熱を出した子どもの看護のため残業を断った女性が、「みんな残業しているのに、ふざけんなよ!」と、常務から怒鳴られていました。
また、有給休暇を取得する際には、届出書を出さなければならず、その内容によっては休暇を認めてもらえません。
職場を変えるためにはどうしたら良いのでしょうか。
ちなみに【事例1】の解答は「弁償の義務はない」で、給与から天引きされません。普通に働いていて生じたミスは弁償する必要はないため、たとえば、飲食店で皿を割ってしまった場合でも、弁償の責任は負われません。
嶋﨑弁護士によると、職場でトラブルに合った際は、「自分を責めない」「証拠を残す」の2点が重要とのこと。困った時には一人で抱え込まず、行政機関、弁護士、労働組合、NPOなどに相談してほしいとのことでした。