第77回「アイコンタクト」

みなさん、こんにちは。株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。今回は「アイコンタクト」の重要性についてお話しします。

心理学者ギャラップがチンパンジーに対して鏡を使った実験を行いました。まず、ギャラップはチンパンジーのいる部屋に鏡を置いてみました。すると、はじめは鏡に向かって声を出したり、威嚇したりなど、鏡に映る自分の姿を他の人とみなしているかのような反応をしました。しかし、2~3日経過すると、鏡に映った姿を見ながら自分の毛づくろいをするなど、鏡に映る姿が自分の映しだということを理解したような反応をするようになりました。確認のため、ギャラップはチンパンジーを麻酔にかけて、その間に匂いがしない赤いマーカーで眉毛の上にマーク付けてみました。すると、意識を取り戻したチンパンジーは鏡を見ながら自分に付いたマークを触る反応を示したのです。これらの実験結果から、チンパンジーは鏡に映った姿を自分だと認識することが分かったのです。

さらに、ギャラップは生後間もなく他のチンパンジーたちと隔離されて育てられたチンパンジーで同じ実験をしてみました。すると、隔離されて育ったチンパンジーは仲間と一緒に育てられたチンパンジーと違って、鏡のチンパンジーが自分だと理解できないことがわかりました。鏡を入れても、赤いマークを触る反応は増えなかったのです。この結果、鏡に映った自分を認識するためには、他のチンパンジーとの視線のやりとりを十分に経験しておく必要があるということがわかりました。人間も同様です。他人と目を合わせる「アイコンタクト」が重要なのです。

1992年にサッカー男子日本代表の監督に就任したハンス・オフトが指導の際に何度も繰り返した言葉のひとつが、「アイコンタクト」でした。日本サッカー協会(JFA)のサッカー用語集によると「コミュニケーションの手段のひとつ。目と目の合図でお互いの意思疎通を図る際に用いられる。パスを出すタイミングをとるときに非常に重要となる。」とあります。当然のことながら、この「アイコンタクト」はサッカーだけでなく、一般の生活においても重要です。

最近、電車の中などの人混みで、幼児を連れた母親が携帯電話でメールをしたり、携帯サイトを見ている姿をよく目にします。自分の子供に対しては、ぜひ視線を合わせてやってください。子供の成長過程において、「他人と目を合わせる」ということはとても大切なことなのです。ただでさえ、遊びにおいてもテレビゲームの影響で対面でのコミュニケーションが減っていて、子供同士で視線を合わせることが少なくなっています。せめて親子の中では「アイコンタクト」でのコミュニケーションを実践していただきたいと思います。

また、職場においても「アイコンタクト」は少なくなっています。特に、パソコンが多く導入されている職場ではこの傾向が顕著です。朝一番に出勤してきた仲間が「おはようございます!」と挨拶しても、パソコンの画面を眺めたままで挨拶を返したり、部下が話しかけても目を合わせずに、パソコンで作業をしながらうわの空で部下の話を聴いたりする管理職が増えています。このような「アイコンタクト」のない職場に「うつ病」が増えているのです。

霊長類で「白目」があるのは人間だけだそうです。これは人間の目が単に「見る」機能だけでなく、相手に自分の視線を「見せる」ために進化したのだといわれています。「目は口ほどにものを言う」といいますが、人間の視線は「どこをみているか」ばかりか、「何を考えているか」まで意味することもあるのです。「アイコンタクト」はそれほどまでにコミュニケーションで重要だということを再認識して、これからは今以上に相手の目を見て会話することを心がけましょう。

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