第78回「ウロウロと出かける」

みなさん、こんにちは。株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。今回はまず、私が研修をやらせていただいた受講者の方から「気づき」をいただいたことをお話させていただきます。

私がワークライフバランス(仕事と生活の調和)研修の中で、「私の健康法」について受講者のみなさんにグループで話し合っていただいたときのことです。ある受講者の方が「私は会社に出勤するとき、健康のために会社の最寄り駅の一駅前で降りて一駅分だけ歩くことにしました。ウロウロしながら歩いているうちに、今まで電車に乗っていたときに電車の車窓からは見えなかったものがたくさん見えるようになり、忙しくて忘れていた大切な時間を得ることができました。」と言われたのです。目からウロコが落ちました。私たちは「情報化」「スピード化」「グローバル化」の真っ只中にいて、ビジネスの世界を中心にその動きについていくことに必死になっています。ウロウロしていると「あっ」という間に周りから遅れをとることになります。でも、あまりにもその動きに翻弄されすぎて、「大切な何か」を失っていることに気づかないことが多くあるのではないでしょうか。

たとえば、どこかに行こうと思ったとき、今ではカーナビやスマホの地図アプリを使って迷わずに正確に時間通りに目的地につくことができます。ビジネスの世界では確かに必要なことだと思います。しかし、「迷いながら、間違いながら、時間に遅れながら」行動することは人生にとってはとても重要なことではないかと思うのです。目的地に着くために、ウロウロしながら人に道を聞いたり、地図を探したり、いろいろな方法を自分で考え、時間に遅れて叱られたり、次の予定をどう工夫するか考えたりして、問題解決能力を身につけることも大切なのではないでしょうか。

私の趣味の一つが「商店街めぐり」です。前職がデパート勤めだったこともあり、講演の仕事で地方都市に行けば、市街中心部の商店街を必ず見るようにしていますし、(私は名古屋から東京に移り住んで6年目になりますが)多くの関東地域の商店街も見させていただきました。先日も特に買いたいものがあるわけでもなく、ウロウロすることが目的で東京都内のある商店街に女房と二人で行くと、商店街の中に畳屋があって、(その業界の関係者には申し訳ありませんが)「今でも畳屋はあるんだ~」と思ったりして、新たな気づきをいただきました。

商店街を見ていると、都内はまだしも地方都市の商店街には寂れた「シャッター街」になっているところも多く、もともと小売業に関わっていた私にとっては非常に残念で寂しく思います。その原因はいろいろあるのでしょうが、やはり一箇所で多くの商品が手に入る大型スーパーやコンビニが多くできたこと、そして品揃えがよく、しかも価格が安い大型専門店などが登場したことにより商店街の運営に影響を与えていることが大きな原因の一つでしょう。このような商店街の例でもわかるように、世の中の流れは「情報化」「スピード化」「グローバル化」が進むにつれ、消費者も「より早く、より正確に、より効率的に」を求めるようになっています。しかしそれで本当にいいのでしょうか。

残念ながら、学校の教育も(受験を見ればわかるように)「より早く、より正確に、より効率的に」答えを出せる人間を育てることが主な目的になってしまっています。では、家庭の教育はどうでしょう。街を歩いていると、路上に咲いている花や落ちているものを見るたびにあちこち寄ってウロウロしている子供に対し、「いつまで見ているの!早く来なさい!」と怒っている母親をよく目にしますが、これもスピードや正確さや効率を優先しているように見えて残念でたまりません。私が子どものころは道をウロウロしながら歩いていろんな発見をしたものです。

これからは私たち大人も「大人の目線」ではなく、効率は悪いかもしれないけれど、いろいろな発見があるウロウロした子供の目線で世の中を見ることが必要ではないでしょうか。そうすれば、大人になって忘れていたいろいろなものが見えてくるかもしれません。まずは車や電車を利用する生活から自転車や歩きに変えてみて、地図を持たずにウロウロと出かけてみましょう。

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