第49回明日知恵塾 国立印刷局を見学

6月6日(水)、国立印刷局東京工場(東京都西区)で第49回明日知恵塾を開催しました。今回の明日知恵塾は、働く現場を体験する工場見学と、“働く”を考えるグループディスカッションの2部構成。学生30名、社会人10名、計40名が参加しました。

第1部の工場見学では、紙幣が印刷される現場を実際に見る前に、紙幣の歴史や製造方法等についてレクチェーを受けます。普段何気なく使用しているお札ですが、その正式名称は「日本銀行券」と言います。日本銀行券は、財務大臣の製造命令に従い、日本銀行の発注に基づき、国立印刷局が製造しているとのこと。紙幣の下部には、「国立印刷局製造」と印字されています。

国立印刷局の歴史は古く、1871(明治4)年に創設され、以来140年以上にわたり、日本の紙幣を製造しています。時代の移り変わりとともに、紙幣の印刷技術は進歩し、紙幣のなかには、「深凹版印刷」「識別マーク」「ホログラム」など、さまざまな偽造防止技術が盛り込まれています。現在、国立印刷局が印刷する紙幣は年間約30億枚。お札の厚さは約0.1㎜のため、30億枚を積み重ねると約300㎞になり、富士山の高さの約80倍もの量になるそうです。

それでは、実際に紙幣が印刷される工場に行ってみましょう。工場に一歩踏み込むと、紙幣の印刷に使用されるインクのにおいが漂ってきます。紙幣が刷られる現場は、ガラス越しに見ることができます。一枚一枚の紙幣に切断される前の束があちらこちらに積まれ、従業員が枚数等をチェックしています。自分のお金でもないのに、大量のお札を前にすると、自然と興奮してくるのはなぜでしょう。学生も社会人も興味津々に工場内を覗きこんでいます。

印刷の工程では、1枚でも紙幣が紛失したら、見つけ出すまで探し続けなければならないとのこと。厳重な管理体制のもとで、日本のお札はつくられていました。

工場見学のあとの第2部は、明日知恵塾では恒例になっている、学生と社会人とのグループディスカッション。進行役は、法政大学大学院の藤村博之教授です。今回のディスカッションのテーマは「仕事で失敗したらどうするの?」。学生と社会人が5班に分かれ、テーマに沿って自由に意見を言い合います。

それでは、仕事の失敗に対して、各班ではどのような話し合いがあったのでしょうか。代表的な意見を見てみましょう。

・失敗は仕方がない。改善策が大切

・失敗には不注意の失敗と、前向きな失敗がある

・失敗したときには、隠さずに上長に報告することが大切

・失敗は成長につながる。リカバリーが重要

最後に藤村教授は、失敗に対して寛容でなくなったことで、消えていったものがあると指摘します。

「日本の飲食店は、クレームを受けないように、食中毒になる可能性がある生ガキなどはメニューに置かない流れがあります。このように失敗につながる要素を排除し続けると、今まであったサービスは消える方向へと進んでいきます。人に対する寛容さがサービスを育て、住みやすい社会になることを、肝に銘じなければなりません」

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