第90回「あまのじゃく心理」(2015.6.2掲載)

みなさん、こんにちは。株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。今回はまず「つるのおんがえし」の昔話からです。

むかしあるところにまじめで働き者の近所でも評判の好青年がいました。ある寒い日の夜、青年の家に若い女性が訪ねてきました。その女性は青年に「一晩だけ泊めて下さい」と言いました。やさしい青年は彼女に温かい食事を勧めた上に「私の部屋の布団でおやすみなさい」と言って、自分は土間に横になりました。その女性は恐縮しながらも青年に御礼を言って、「私は恥ずかしがり屋なので朝まで部屋をのぞかないで下さい」と言いました。青年は「わかりました」と約束して、再び横になりました。

彼女が青年の部屋に入って少しすると、ガタガタと何かを動かしている音がしました。青年は「何をやっているんだろう」と不思議に思いながらも、のぞかないことを約束したことを思い出して、のぞきたい衝動を我慢しました。青年は「つるのおんがえし」の話を思い出し、きっと彼女は私のために、高級な「機(はた)」を織っているんだと自分に言い聞かせて、期待をしながら眠りにつきました。翌朝すっかり静かになった部屋の扉を開けると彼女はいませんでした。また、お金から家財道具からすべてがなくなっていました。そうです、彼女は「つる」ではなく、「サギ」だったのです。正直者はやっぱりバカを見るというお話でした。めでたし、めでたし・・・。

人間には「のぞくな!」と言われるとのぞきたくなる「あまのじゃく心理」が備わっています。つまり、禁止されるとそれを破りたくなり、逆に勧められると反発したくなるという潜在的な心理があるのです。この「あまのじゃく心理」が強い人、つまり「右を向け!」と言うと左を向きたがる人とコミュニケーションをとることは大変難しく、ストレスになるように思われますが、この心理傾向を逆に利用すれば、頑固に反対をしている人の態度を180度転換させることも不可能ではありません。

営業成績がトップクラスの車のセールスマンは、車を買っていただきたいお客様に対して、「車を買ってほしいと言いながらお恥ずかしい話ですが、私どもの車にもわずかですが欠陥車があります。もしお気づきの点がございましたらすぐにお知らせください。」と言うのが殺し文句なのだそうです。お客様は、まさかセールスマンが自分からそんなことを言い出すとは思わなかった驚きから、つい「そんなことはないだろう」という「あまのじゃく心理」がはたらいて、その結果、車を買っていただけるのだそうです。

また、この手法は会議などの説得の場面でも使えます。頭ごなしに「君は間違っている」と言えば、「私は絶対に間違っていない」という反発になりますが、そこで一歩譲歩して「私が間違っているかもしれないが」と話しかけてみると、相手に「あまのじゃく心理」がはたらいて「私の方にも間違いがあるかもしれない」という気持ちが生まれ、次第に受入の姿勢へと誘導していくことができるのだそうです。みなさんも、仕事で企画や提案の場面があれば一度お試しください。

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