第94回「リンゲルマン効果」(2015.6.30掲載)

みなさん、こんにちは。株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。

昨年6月にブラジルでサッカーのワールドカップが開催されました。(シニアですが)現役でサッカーをやっている私にとってはとても楽しみなイベントでした。日本代表チームの試合を見ていると、選手一人ひとりが自分の役割を意識し、それを実践することで、チームとしてそれぞれの選手が自分の持っている以上の力を発揮しているように見えました。このように、集団においてチームのメンバーが力を合わせることで「1+1」の力が2ではなく、3や4になっていくことがあります。しかし、集団においては逆の現象も起こります。つまり、「1+1」の力が2より小さくなることもあるのです。

人間が集団で作業をするとき、1人で作業するときとくらべて「努力する量を減らそう」という心理が働くことがあります。これを「社会的手抜き」と言います。「社会的手抜き」の実験で有名なのは、ドイツの農業技師であるリンゲルマンの綱引き実験です。被験者が単独で綱を引っ張る場合と、被験者が集団で綱を引っ張る場合とで、どれだけの力が加えられたかを客観的に調べたものです。その結果、集団のサイズが大きくなればなるほど、1人の人がロープを引く力が弱まることがわかりました。綱引きを1人で行なったときの力を100とします。すると、2人では個人の力は93に落ち、3人では85、8人になると49にまで半減してしまうそうです。

これはリンゲルマンの名前から「リンゲルマン効果(社会的手抜き現象)」と呼ばれる心理現象です。この「手抜き」はほぼ無意識のうちに、集団のメンバー全員にわたって起こるものです。しかも、人数が多くなればなるほどその度合いが強くなっていくという厄介なものです。1人ではなく、何人かといっしょに作業などをする場合は、無意識のうちに「みんないるのだから全力を出さなくても」、「自分一人くらいちょっとサボッても全体に影響はないだろう」とムダや手抜きが生じやすいのです。

このリンゲルマン効果を防ぐためには、自分の所属する集団における自分の役割をしっかり認識し、必要な作業を「誰かがやってくれる」ではなく、「自分がやらねば誰がやる」という意識を持ってやっていくことが大切です。もし、無意識とはいえリンゲルマン効果が強く働いてしまうと、集団のパフォーマンス(結果)が悪くなるだけでなく、集団の中での自分の評価がどんどん悪くなり、それがストレスの原因になったり、人間関係の悪化につながったりします。

ちなみに、集団にまぎれて全く努力をせず、力を発揮しないメンバーのことを「フリーライダー(ただ乗りする人)」と言います。これは先ほどの無意識のリンゲルマン効果とは違い、意識して「誰かがやってくれる」と考え、力を出さない人です。フリーライダーになってしまうと自分の評価が悪くなるだけでなく、集団の中で孤立することになり、周りの人とのコミュニケーションが取れない状態になってしまいます。

このように、人間は集団の中で無意識のうちに手抜きをしていることがあり、中には意識的に手抜きをする人になる可能性もあるのです。そんなことにならないためには、サッカー日本代表選手のように集団の中での自分の役割をしっかり認識し、「自分がやらねば誰がやる」という強い意識を持って、何事にも今以上の力を発揮するよう努力しましょう。

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