第101回「インプロ」(2016.1.12掲載)

みなさん、こんにちは。株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。

今回は、まず私がいつもコミュニケーション研修で実施しているゲームを紹介しましょう。「ワンワード」という4~5名のグループで輪になって行なうゲームです。

はじめにグループの中で基準になる人を1名決め、その人から時計回りにゲームを進めることを説明します。「ワンワード」は日本語で「一言」のことで、これは一人一言ずつ話して、言葉を繋げていって、一つの物語をつくっていくというゲームです。たとえば、「桃太郎」という昔話をA~Eの5名でゲームを進めるのであれば、Aさん「昔々」、Bさん「あるところに」、Cさん「お爺さんと」、Dさん「お婆さんが」、Eさん「住んでいました」、Aさん「お爺さんは」、Bさん「山に柴刈りに」…と時計回りに繋げていきます。

私は「物語をつくる」と言いましたが、このゲームは別に正統派の「桃太郎」にこだわらなくても結構です。Aさん「昔々」、Bさん「東京で」、Cさん「若い女性が」、Dさん「コンビニに」、Eさん「買い物に行きました」…と繋げてもいいのです。つまり、このゲームは自分の右側の人(自分の前に話す人)が何を話すかわからない中で、いかに左側の人(次に話す人)に上手に物語を繋げていくかという目的で行ないます。そして、このゲームの面白さはどこにあるかというと、「次に話す人をいかに困らせるか」というところです。もし、次の人を困らせようと思ったら、「しかし」や「ところが」と言えば困ると思います。逆に、自分が困ったときは「白い」や「大きな」や「静かな」という形容詞や形容動詞で繋げていきましょう。これらのポイントを頭に入れてワンワードをやってみましょう。ゲームのお題は昔話「かぐや姫」や「私の日記」や「お題無し」でもいいと思います。お題が「私の日記」であれば、Aさん「今日は」、Bさん「朝7時に」、Cさん「起きて」、Dさん「朝ご飯を食べて」、Eさん「8時に家を出た」、Aさん「ところが」…などと繋げていきます。研修の全体時間にもよりますが、2~5分の適当な時間を設定してください。

みなさんは「インプロ」という言葉をご存知ですか。インプロは「インプロヴィゼーション(Improvisation)」の略で「即興」という意味です。もともとは俳優が台本や打ち合わせもなく、お客様から与えられたお題から即座に演技をする「即興演劇」から始まったようで、現在行なわれているわかりやすい例を挙げると、笑点の大喜利です。それが演劇や音楽やダンスの世界でトレーニングやエクササイズとして広まっていきました。先ほど紹介した「ワンワード」はインプロのトレーニングゲームの一つです。

インプロのゲームによって、相手の意図や場の空気を読む能力、相手に自分の思いを伝えるコミュニケーション能力、柔軟な発想能力、そして何より変化に対応する能力を鍛えることができます。これらの能力は俳優やダンサーだけでなく、ビジネスマンにも必要だということで、アメリカのマイクロソフト社などの大手企業でも社員教育にインプロを取り入れているそうです。

企業環境が大きく変化していく中、私たちビジネスマンは仕事でまったく経験のない業務を命じられたり、突然の人事異動でキャリアの見直しをせまられたり、最悪の場合はリストラの対象になったりすることが考えられます。そんな先が見えない時代だからこそ、力を発揮するのが「即興力」つまりインプロの能力ではないでしょうか。みなさんもまずは「ワンワード」からトレーニングをしてみましょう。

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