第102回「かぜのでんわ」(2016.2.9掲載)

みなさん、こんにちは。株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。

今回は絵本作家いもとようこさんの「かぜのでんわ」という絵本を紹介します。「やまのうえに1だいのでんわがおいてありました」で始まるこの絵本は、かわいい動物たちがクマのお爺さんが山の上に置いた電話を入れ替わりで掛けに来るお話です。その電話は線が繋がっていませんが、「もう会えなくなった人に自分の想いを伝えると、必ずその人に届く」といわれています。絵本の内容を少しだけご紹介しましょう。

あめが ざーざー ふっています。
こんなひに きつねのおとうさんが やってきました。
そして でんわのまえで いつまでも ないています。
ようやく、じゅわきを とりました。
「もしもし、おれ、どうしたら いいんだ! 
 おまえが いないと なんにも できないんだよー。
 ひどいじゃないか!
 おれと こどもたちを のこして いっちまうなんて…。
 ひどいよー ひどいよー ひどいよーー!
 ごめん! こんなこと いうつもりじゃなかったんだ。
 ほんとうは ありがとうを いいにきたんだ。
 ありがとう! ありがとう! いままで ほんとうに ありがとう!」…

ねこさんが やってきました。
ねこさんは いのるように じゅわきを とりました。
「もしもし、かみさまですか? かみさま、おしえてください。
 ひとは なぜ しんでしまうのですか? なぜ うまれてきたのですか?
 いきるということ、しぬということは…どういうことですか?
 おしえてください…かみさま」…

この絵本は岩手県大槌(おおつち)町にある「風の電話」をもとに作られたものです。ガーデンデザイナーの佐々木格(ささきいたる)さんが東日本大震災を機に自宅の庭に「風の電話ボックス」を置きました。親しい人を亡くした被災者が、空にいる震災の犠牲者と静かに対話をしたり、自分の想いを伝える空間で、実際の電話線は繋がっていません。電話の横にはこう書かれているそうです。

   風の電話は心で話します
   静かに目を閉じ、耳を澄ましてください
   風の音が又は浪の音が或いは小鳥のさえずりが
   聞こえたなら あなたの想いを伝えてください

佐々木さんは「あまりにも突然、多くの命が奪われた。せめて一言、最後に話がしたかった人がたくさんいるはず。そして今回の震災だけでなく、会えなくなった人に伝えたい想いを持っている人は多いと思います。どなたでもいらしてください。」と言っています。震災後、多くの人が訪れて、この電話で亡くなった人と心を通わせています。そして、「風の電話」は今日も亡くなった大切な人との会話をするために訪れる人を静かに待っています。

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