全ベルコ労組 中央労働委員会で和解 大きな成果

 

記者会見のもよう

冠婚葬祭大手ベルコで労働組合の結成をきっかけに従業員2人が実質解雇され、全ベルコ労働組合が不当労働行為の救済を求めていた事件で3月30日、中央労働委員会で和解が成立しました。

 和解の主な内容は、ベルコ社と全ベルコ労働組合が労働条件について協議すること、ベルコ社が代理店を通じて不当労働行為を行わないこととなっており、当事者2人の職場復帰とバックペイの支払いを勝ち取った1月の札幌高裁での和解に続き、大きな成果を得る和解となりました。

和解の主なポイントは以下のとおりです。

  • ベルコ本社と全ベルコ労働組合が、相互の立場を尊重して良好な関係を構築するように努めること
  • ベルコ本社と全ベルコ労働組合が組合員の勤務条件について誠実に協議を行うこと
  • 会社が代理店主に対して、代理店主が組合活動を理由に組合員に不利益取り扱いをするよう圧力をかけたり、促したりしないこと
  • 会社が代理店主に対して組合員が業務していることを理由に代理店の閉鎖や廃業をするよう圧力をかけたり、示唆したりすることを行わないこと
  • 会社は代理店主に対して労働組合法を順守すべきことの理解を徹底すること

 連合は同日、事務局長談話を発出。今回の和解について「労働組合とベルコが当事者として協議を実施することを認めるという実質的に団体交渉を行うことを確認する和解が成立したことは大きな成果である」と評価しました。

 また、情報労連も同日、闘争連絡を発出。和解について、「ベルコ社と全ベルコ労組の間において、実質的な団体交渉を行うことならびに不当労働行為をせしめないことを主たる内容としており、札幌高裁での当事者二名の復職をはじめとする和解に続き、大きな前進が図られたものと認識する」と評価しました。

 和解の成立を受けて、今後は良好な労使関係のもと健全な職場を構築することが求められます。情報労連は、引き続き、連合や連合北海道、全ベルコ労働組合の仲間と連帯し、ベルコで働く全国の仲間が働きがいや誇りをもって働き続けることができる環境づくりに向けて取り組んでいきます。

●和解を受けて記者会見を開催

 中央労働委員会での和解を受けて、連合、情報労連、全ベルコ労働組合は同日、記者会見を開きました。

 冒頭あいさつをした連合の山根木副事務局長は次のとおり述べました。

 「札幌高裁の和解は、当事者2人の職場復帰とバックペイの支払いという、2人の過去を取り戻す戦いだったが、中労委での闘いは、ベルコ社において労使関係を築いていく未来志向の戦いだった」

 「和解では、ベルコ社が代理店を通じて不当労働行為をしないことや、ベルコ社と労働組合が協議することなどを確認した。とりわけ、代理店を飛び越えてベルコ社と全ベルコ労働組合が協議することを確認したことは大きなポイント。ベルコ社が当事者として協議に応じることを確認したのは極めて重要であり、今後の労使関係を築く上での礎になる」

 「今後は健全な労使関係を作るフェーズにはいる。集団的労使関係を広げるために、連合としても引き続き取り組んでいく」

 また、今回の和解が社会全体に与える影響として、「あいまいな雇用が社会問題化する中で、連合は使用者責任を逃れるようなビジネスモデルは許さないと繰り返し訴えてきた。今回の和解内容を社会に発信して、こうした問題が起こらないようにしたい。北海道労働委員会の命令や札幌高裁や今回の和解が、今後起こり得る紛争の歯止めとなり、労働者が守られる解決に導くものにしたい」と訴えました。

連合の山根木副事務局長

 続いて、弁護団の棗弁護士がこれまでの経過などを解説しました。

 棗弁護士は、「今回の事件が社会にとってインパクトがあるのは、ベルコ社が会社ぐるみで業務委託を濫用し、使用者性を逃れようとしていたから。こうしたビジネスモデルは看過できない」と指摘。

 その上で、今回の和解のポイントについて、①ベルコ社が不当労働行為の当事者として代理店を介して不当労働行為を行わないと約束したこと②ベルコが当事者として、今後将来にわたって組合と協議することを約束したこと。代理店主に労組法を守らせると約束したこと③将来にわたっての労使関係をつくるために命令ではなく和解を優先したこと――を挙げました。

 とりわけ、③については、中労委で救済命令を出してもらう選択肢もあったものの、救済命令では申し立て時点での使用者性しか問うことができないため、将来にわたって会社と協議の約束をするためには、和解した方が組合にとって有利であると判断したことを強調しました。

棗弁護士

 続いて、全ベルコ労働組合の高橋委員長がコメントしました。

 高橋委員長は、「労働相談に駆け込んでから7年半。連合や情報労連、弁護団、仲間の皆さんに感謝したい。ベルコ社との和解が成立したので今後は組合の拡大に力を入れていきたい。健全な労使関係を構築して、全国で働く従業員の働きやすい環境を構築したい。労働組合を結成したからここまでこれたのだと思っている。労働組合のありがたみや必要性を訴えたい」と述べました。

全ベルコ労組の高橋委員長

 最後に、支援チームを率いてきた連合の逢見顧問が次のとおりコメントしました。

 「2015年10月に連合の事務局長に就任し、連合北海道の担当者からベルコ事件について聞いて思ったのは、組織丸ごと業務委託という使用者責任から逃れるビジネスモデルが世の中に広がったら、日本の雇用社会は根底から覆るということだった。絶対に負けることができない戦いだと感じ、極めて異例のことだが、連合本部が闘争支援に加わった」

 「一連の和解は、勝利和解だと思っている。札幌高裁では2人の失われた過去を取り戻し、中労委ではベルコ社も入る形で協議の枠組みができ、将来の労使関係を構築する土台ができた。この結果につながるまで、7年半かかったが、あいまいな雇用の問題に対しても、一つの大きな橋頭保を築いたと思っている。この結果を次の戦いに生かし、困っている労働者の助けになる運動を推進してほしい」

連合の逢見顧問

全ベルコ労働組合への問い合わせは同労組のホームページまで

http://abu2015.net/

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