明日知恵塾 第50回記念シンポジウムを開催

2006年からスタートした明日知恵塾は、記念すべき50回目を迎えました。今回は、これまでの歩みを振り返る特別企画として、第50回記念シンポジウムを開催。10月6日、法政大学市ヶ谷キャンパスに、明日知恵塾にゆかりの深い社会人、学生が集結しました。3部構成で実施された記念シンポジウムの内容をダイジェストで紹介します。

 

第1部:講演

テーマ「明日知恵塾第50回記念によせて」

杉山豊治(連合総研副所長)

今から10年以上前の2006年、本シンポジウムのパネルディスカッションの司会進行を務める藤村教授の呼びかけにより、明日知恵塾は始まりました。藤村教授は、「学生に対してありのままの働く姿を伝えたい」という思いを抱いていて、そこに情報労連が共鳴したのです。

その当時、情報労連は『情報労連21世紀デザイン』を掲げ、21世紀に向けた労働組合のあるべき姿を議論していました。21世紀デザインの中心に据えたのは、「社会と価値を共有できる活動を展開」すること。社会に欠かせない存在として、期待され共感される運動を展開してくことをめざしました。

「社会と価値を共有できる活動」を実施するためには、組合員が実際に活動できる場を提供しなければなりません。その活動の場の一つが明日知恵塾。明日知恵塾は、社会と価値を共有する場としても位置づけられ、スタートを切りました。そのため、学生と価値を共有する機会が1回1回積み重なり、50回を数えるまでになったことを心から感謝しています。

 

第2部:講演

テーマ「明日知恵塾の魅力」

戎野淑子(立正大学教授)

学生は入学時から就職のことが気になっています。けれども、何をめざせばよいか明確に決められず、揺れ動いている状況です。就職に関する情報は、就職サイト、アルバイト先、親、友達、SNSなどに限定され、「自分はどのように仕事を決めればよいのか」「やりたい仕事がわからない」などの悩みを抱えています。

明日知恵塾に参加した学生は、大変なことも含め、社会人のありのまま現実を教えてもらえます。働くことの実像を真正面から聞ける機会は稀有なため、学生にとって貴重な体験になっているのです。

社会人の生の声を聞くことで、働くことに対する理解が深まります。働く姿が実感できることで、就職に向けて準備すべきことがわかってきます。明日知恵塾は社会人になる第一歩を踏み出すための、貴重な役割を担っているのだと思います。

 

第3部:パネルディスカッション

テーマ「就職して気づいたこと、明日知恵塾に参加して役立ったこと」

司会進行:藤村博之(法政大学教授)

パネリスト:寺内慎太郎さん(法政大学OB)

         三好宏明さん(立正大学OB)

         林知子さん(國學院大學OG)

 

三好:明日知恵塾を通して社会人の本音を聞き、「自分がどのような仕事をしたいのか」「どのような仕事が向いているのか」を見つめ直す機会になりました。就職活動の期間は長いようで、短いものです。どのような業界に進めばよいのか、迷う人は多いと思います。社会人とディスカッションを交わすなかで、自分に合った働き方が見えてきます。明日知恵塾に参加することで、社会人として進むべき道が取捨選択しやすくなりました。

 

林:大学生の頃、明日知恵塾を通して、働くことについて考えてきましたが、実際に自分が社会人なって実感したのは主につぎの2点です。一つ目は、仕事は自らが主体的につくっていく必要があること。社会人は自身で工夫を加え、周りから認められない限り、仕事が広がっていきません。自主的に考えることが求められる点に、学生と社会人の違いを感じました。もう一つは、人に頼れないと仕事は失敗する、ということ。わからないことを抱えたまま仕事を進めると、自分だけでなく、周りにも迷惑が及びます。迷ったら聞く、それが社会人の基本だと思います。

 

寺内:藤村ゼミに所属していたこともあり、藤村先生からは、「社会人になって先輩から労働組合の役員になることを誘われたら、ぜひ引き受けてほしい」と言われていました。そのこともあり、現在は労働組合の執行委員を務めています、役員になるのを後押ししたのは、明日知恵塾を通して労働組合が身近な存在だったこと。働くことの課題や労働組合の役割など、社会人の生の声を聞いていたので、抵抗なく労働組合の役員を引き受けることができました。

 

藤村:大学や学生に向けて、労働組合が自ら発信する明日知恵塾のような活動は、日本のなかでは珍しい取り組みです。明日知恵塾の最大の特徴は、学生にとっても、社会人にとっても双方にメリットがあること。学生は、社会人になる前に働く生の姿を知ることできます。一方社会人は、普段は見つめ直すことの少ない自分の仕事について、考える場になります。学生からも、社会人からも「参加してよかった」という感想が出てくるのが、明日知恵塾なのです。明日知恵塾が東京近郊の取り組みにとどまるのではなく、全国へと展開していければ最高ですね。

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