みなさん、こんにちは。株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。今回は私の愛読書である上前淳一郎さんの「読むクスリ ~人間関係のストレス解消に~」に載っている話を紹介します。
日本製の工業製品、つまり「メイド・イン・ジャパン」と言えば、今では世界でも高い評価を得ていますが、今から60年程前の1950年頃には信頼度が低く、世界ではとても通用する製品ではなかったようです。しかし、ある一人の日本人がカメラという精密機械製品で「メイド・イン・ジャパン」の評価を確立したのです。その日本人の名は御手洗毅(みたらい つよし)、キヤノンの創業者の1人です。
御手洗は大分県に生まれ、北海道大学医学部を卒業。卒業後は医者を本業にしていました。当時、御手洗が病院で使う顕微鏡はドイツ製でした。光学技術で日本は世界に大きく遅れをとっていたのです。日本でカメラの最高峰であるドイツ製の「ライカ」に負けないカメラをつくろう。そしてそのための会社をつくろう。そして、35ミリカメラの第一号機「カンノン(KWANON)」が完成しました。現在のキャノンという社名はここから来ています。
経営の指揮を執ることになった御手洗は社員と経営者がお互いに支えあったり、経営者が社員の話をよく聞くなど、社員を信じる経営を実践しました。「週休二日制」を日本で初めて導入した企業はキャノンです。東京オリンピックを2年後に控えた1962年(昭和37年)のことでした。キャノンは「GHQ」という社内運動も始めていました。これは「ゴー・ホーム・クィックリー(Go Home Quickly)」の略で、早く家に帰って家族サービスをしようというものでした。これらはいずれも当時としては異例の発想でした。
御手洗の掲げた経営理念である「実力主義」、「健康第一主義」、「新家族主義」はどれも時代の先端を行くものでした。彼はこれらの経営理念に基づいて、年功序列の排除や社員が安心して仕事に取り組める環境づくり、効率を追求した短縮時間労働など、今では常識になっていることを先見の明で次々と実施していきました。中でも、キヤノンの経営理念にある「新家族主義」は家父長の命令が絶対である家族主義と一線を画す意味で「新」がついていますが、「社員が一生幸せに暮らせる会社をつくりたい」という理想に基づいた先進的な人間尊重の経営哲学です。それは、「社員の安心感が会社の生産性向上のパワーの源である」という「人」を重視した経営方針です。
みなさんの会社は社員の健康を第一に考えてくれますか?家族との一家団欒を大切にしてくれていますか?社長以下、すべてのマネージャーが部下の健康や家族のことを考えて、「ゴー・ホーム・クィックリー!」と笑顔で言えるような会社でありたいですね。