第106回「アンガーマネジメント(1)」(2016.6.7掲載)

みなさん、こんにちは。株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。

さて、今回からはイライラや怒りをうまくコントロールしてストレスを軽減する「アンガーマネジメント」についてお話ししていこうと思います。「アンガーマネジメント」とは怒り(アンガー)をうまく配分する(マネジメント)という意味です。もともとは1970年代にアメリカで心理教育として取り入れられたのが始まりです。現在のアメリカでは教育現場だけでなく、企業が社員の生産性向上のために研修に取り入れています。また、スポーツ界では選手がカッとして暴力をふるって、選手生命を奪われることがないよう教育プログラムに取り入れたり、刑務所では受刑者の更生プログラムとして利用するなど、さまざまな場面で活用されています。

企業では、特に「金融業界」で普及しているようです。株や為替などの金融商品を扱う人は「損」が出たときに怒りで頭に血がのぼってしまい、冷静な判断ができなくなって、より多額の損失を出してしまうことがあるそうです。それを防止するためにアンガーマネジメントを身につけるといいます。この他にも、多忙な仕事の中で冷静な判断が必要な医師や弁護士、怒っていても人前で醜態をさらすことができない政治家など、ストレスが多く、怒りをマネジメントできないことが致命的になる職業の人たちが積極的に取り組んでいるようです。

日本では2008年に日本アンガーマネジメントセンター(現 一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会)が設立され、「怒りの連鎖を断ち切ろう」を理念に、企業や学校、病院、介護施設向けの研修などを行い、アンガーマネジメントの普及に努めています。私も現在は日本アンガーマネジメント協会の「公認シニアファシリテーター」として、多くの研修を実施しています。(同協会の資格制度についてはHPをご参照ください http://www.angermanagement.co.jp/ )

ある人が仕事で思う通りにいかなくて、職場でイライラします。そして、その怒りの感情を家庭に持ち帰ります。そしてパートナーへ怒りの矛先を向けます。パートナーに怒りをぶつけられた人は自分の子どもに矛先を向けます。親に怒られた子どもは学校に行って、自分より弱い子どもをいじめます。いじめられた子どもは怒りを家庭に持ち帰って、親にぶつけます。そして、親は会社に行き同僚や部下や取引先に怒りをぶつけます。あるいは、店に行って店員にぶつけたり、病院に行って看護師にぶつけます。

このように、怒りは連鎖します。多くの人は誰かに怒りをぶつけられたら、誰かにぶつけないと気がすまないと思っているからです。その人のせいじゃないのについ文句を言ってしまった、なんとなく虫の居所が悪くて怒ってしまった、相手が悪くないことがわかっているのに怒鳴ってしまった…こんな経験はありませんか。私たちは知らず知らずのうちに怒りの連鎖の中に囚われているのです。

アンガーマネジメントは怒らなくなることを目的としていません。怒りの感情は人にとってごくごく自然な感情です。怒ること自体はまったく問題ありません。怒ることと怒らないことの区別ができていないこと、適切に怒れていないことが問題なだけです。アンガーマネジメントができると、自分の怒りや人の怒りと上手に付き合えるようになります。怒る必要があることは適切に怒ることができ、怒る必要がないと思えることは怒らなくても済むようになります。

多くの人は、自分がイライラしたり怒ったりするのは「誰かのせいだ」「何かのせいだ」と信じていますが、それは間違っています。アンガーマネジメントができれば、自分が怒るか怒らないかを自分で決められるようになり、誰かに怒りをぶつけられても誰かにぶつけかえす必要がないことがわかります。そうなれば、自分のところで怒りの連鎖を断ち切ることができます。そして、アンガーマネジメントができる人が増えると、社会のところどころで、怒りの連鎖が断ち切られるのです。

次回からは具体的にアンガーマネジメントを学んでいただきます。ぜひ、みなさんも怒りに振り回されない人になりましょう。ムダな怒りを減らしましょう。そして、仕事や生活でストレスを感じない自分に変身しましょう。

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