第114回「アンガーマネジメント(9)」(2016.11.8掲載)

みなさん、こんにちは。株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。今回もイライラや怒りをうまくコントロールしてストレスを軽減する「アンガーマネジメント」についてお話ししていきます。

さて、前回は人が怒りを感ずるメカニズムは次の3段階を踏むことを勉強しました。具体的には、「出来事との遭遇」「出来事の意味づけ」「怒りの発生」の3段階を踏みます。そして、第一段階の「出来事との遭遇」が怒りを生むのではなく、第二段階の「出来事の意味づけ」に原因があることをお話ししました。出来事を自分の中の基準に照らし合わせ、正しいか否かを判断し(意味づけをし)、その結果が許せないと怒りが生まれるのです。

たとえば、あなたが仕事で会社の後輩と待ち合わせをしていて、後輩が待ち合わせ時間に遅れてきたとします。あなたは待たされてイライラしていました。後輩が遅刻してきたことが、イライラの原因でしょうか。遅れてきた後輩が、あなたを怒らせたのでしょうか。それとも、以前から遅刻が何度もあったということを思い出して、怒っているのでしょうか。怒りの原因は、後輩自身や「後輩が遅れてきた」、「後輩がいつも遅れてくる」という出来事でしょうか。

私たちを怒らせるものの正体は、「べき」という言葉で表すことができます。「べき」は自分の願望、希望、欲求を象徴する言葉です。私たちはそれぞれオリジナルの「べき」をもっています。「上司はこうあるべき」、「部下はこうあるべき」、「人はこうあるべき」などです。この自分のもっている「べき」の「理想」と「現実」のあいだにギャップを生じると怒りが発生するのです。先ほどの話は、「後輩はこうあるべき」「後輩は待ち合わせの時間を守るべき」というあなたの「理想」に対して、遅刻という「現実」が発生したため、そのギャップに怒りを感じたのです。

怒りの原因は、後輩自身や「後輩が遅れてきた」、「後輩がいつも遅れてくる」という「出来事との遭遇」ではありません。「後輩はこうあるべき」「後輩は待ち合わせの時間を守るべき」という、あなたが持っている「出来事の意味づけ」に原因があるのです。もしあなたが、「後輩も待ち合わせに遅刻することがある」、「遅刻は誰にでもある」と思っていたとすれば、「怒りの発生」にはつながらなかったでしょう。

まずは、これらの「べき」についてよく考えてみてください。これらの「べき」は個人の価値観に由来するものであるため、絶対的な正解はありません。ただ、本人にとっては常に「正解」となります。ただ、多くの「べき」は年代や立場によって変わります。たとえば、私が子供のころは「知らない人にも挨拶はすべきである」と教えられましたが、近年は「知らない人には注意すべき」という教えに変わってきています。また、「自分のやりたいように仕事を進めるべきだ」と言っていた人が、自分に部下ができたら「上司の言うとおりに仕事を進めるべきだ」に変わることもあります。

「べき」に絶対的な正解はありません。アンガーマネジメントで大切なことは自分の「べき」と他人の「べき」の違いをよく理解し、まずは「これを破ると私は怒りますよ」という自分の「べき」を相手に示しておくことです。そうすれば、周囲の人があなたを怒らせるような「出来事の遭遇」を少なくすることができます。「私は時間を守る人間です。時間に遅れることを許しません。」と後輩に言っておけば、遅刻の発生を防ぐことができるかもしれません。

次回は、この「べき」をもっと詳しく分析し、「出来事の意味づけ」を変えることによって「怒り」をコントロールしていく方法を勉強しましょう。

関連記事はこちら