第115回「アンガーマネジメント(10)」(2016.12.13掲載)

みなさん、こんにちは。株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのキティこうぞうです。今回もイライラや怒りをうまくコントロールしてストレスを軽減する「アンガーマネジメント」についてお話ししていきます。

さて、前回は怒りが発生する仕組みについて詳しく勉強しました。もう一度復習しておきます。前回、人が怒りを発生するまでには「出来事との遭遇」「出来事の意味づけ」「怒りの発生」の3段階を踏むことを説明しました。また、人は「~すべき」、「~すべきでない」という自分の理想、つまり「べき」と自分の目の前で起こっている「現実」の間にギャップが生じることで「怒りの発生」につながるというお話をしました。

たとえば、「会社の後輩が待ち合わせ時間に遅れてきた」という第1段階の「出来事との遭遇」、つまり自分の目の前で起こっている「現実」があった場合に、第2段階の「出来事の意味づけ」、つまり「後輩は待ち合わせの時間を守るべき」という自分の理想との間にギャップが生じることで、第3段階の「怒りの発生」につながります。この「出来事の意味づけ」、つまり「べき」を変えていくことで「怒りの発生」を防ぐことができるようになります。それが「怒りやすい体質を改善する」ということなのです。

人の心のなかにある「こうあるべき」という価値観は、一人ひとり違います。自分の「こうあるべき」、「こうあるべきではない」は何か考えてみましょう。たとえば、待ち合わせ時間についてのあなたの「べき」は1~3のうちどれでしょう。
1.待ち合わせ時間の5分前までに来るべき
2.待ち合わせ時間ちょうどまでには来るべき
3.(連絡なく遅れるのは)5分後までに来るべき

「待ち合わせ時間は守るべき」という考え方は多くの人が同意すると思いますが、仮に10時の待ち合わせだったとして、5分前には約束の場所に到着しておくべきなのか、あるいは10時ちょうどまでには来るべきなのか、あるいは5分くらいの遅刻は許すべきなのか、と「べき」には個人差があります。

実は、自分の「べき」と自分の目の前で起こっている「現実」にギャップが生じても、すべてが「怒りの発生」につながるわけではありません。たとえば、「1.待ち合わせ時間の5分前までに来るべき」という価値観を持っている人が10時5分前に待ち合わせ場所に来たとして、「3.(連絡なく遅れるのは)5分後までに来るべき」という価値観を持っている人と待ち合わせをして、相手が待ち合わせ時間を守らずに、10時5分に来たとしたら「怒りの発生」になるかもしれませんが、「2.待ち合わせ時間ちょうどまでには来るべき」という価値観を持っている人と待ち合わせをして、相手が待ち合わせちょうどの10時に来たとしたら、「怒りの発生」にはならないかもしれません。

「べき」には3つあります。(1)自分と同じ「べき」、(2)少し違うが許容できる「べき」、(3)自分と違う許容できない「べき」です。(1)、(2)の場合では怒りは発生しません。(3)の場合に怒りが発生するのです。そして、それぞれの「べき」には境界線があります。怒りやすい人、キレやすい人、瞬間湯沸かし器のような人は、(1)自分と違う「べき」の多くが(3)自分と違う許容できない「べき」となってしまい、「怒りの発生」が起きやすくなります。つまり、(2)少し違うが許容できる「べき」の面積が狭いのです。そこで、「怒りやすい体質を改善する」ためには、(2)少し違うが許容できる「べき」の境界線を広げ、その面積を増やして行くことが必要です。つまり、許容可能な「べき」を増やすことで、怒りやすい体質を改善していくのです。

自分の理想と同じではない、ギャップのある「出来事との遭遇」があった場合に、「少し自分の理想と違うけど許そう」と思えれば「怒りの発生」には結びつきません。「会社の後輩が待ち合わせ時間に遅れてきた」という自分の目の前で起こっている「現実」があった場合に、「後輩も待ち合わせに遅刻することがある」、「遅刻は誰にでもある」というように、その出来事を少し違うが許容できる「べき」にとらえることで、うまく自分の怒りをコントロールできるようになるのです。

今回で「アンガーマネジメント」についてのコラムは終了です。少しはお役にたったでしょうか。「自分はイライラしてストレスをためやすい」、「自分はついカッとなって、怒ってしまう」という方は自分なりの方法で怒りをうまくコントロールしていきましょう。

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